SSブログ

文楽新春公演・その2 [文楽]

昨日の続きです。

次の演目は「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」。
これは、蘇我入鹿が出てくるお話です。その名前から、鹿の生き血を飲んだ母から生まれた子という設定になっています。史実とは全く関係ありません。
このお話は江戸時代にできたものですが、
奈良時代という設定のため、昔の話であるということがよくわかるように、平安時代の格好をした侍女たちが登場します。
他の人たちは、江戸時代の格好のままです。
現代に生きる私たちからすると、奈良時代なのにどうして平安時代なの? 他の人はどうして江戸時代の服装なの? と思われるでしょうが、
時代考証などというものは、当時浄瑠璃を楽しむ人たちには関係なかったのです。
深く考える必要はないのです。
文楽は庶民の娯楽、世話物に至っては現代でもよくある、大きな事件のドラマ化、みたいなものなのですから。
残念ながら玉男さんは休演のため、吉田玉女(たまめ)さんが代役です。
といっても、玉女さんが遣われる人形も大好きです。
この玉女さんという方、人形を舞わせると実にお上手なのです。
たとえそれが男の人形でも、それはそれは流れるように美しく、
大立ち回りの時も、まるで舞っているようで目が離せません。
昨年「小鍛冶」という演目で、霊狐が人に姿を変えている人形を遣われた時も、
舞台を所狭しと立ち回る様には、こちらが息を飲む程の迫力がありました。

さて、ここからはお話のあらすじになります。興味のある方は続きをお読み下さいませ。

まずは、「道行恋の苧環(おだまき)の段」。
この段は、強欲として描かれる入鹿が主人公ではなく、
入鹿の命を狙う藤原鎌足の子淡海が主人公となります。
淡海は、求馬(もとめ)と名を変えて、市井に身を隠していますが、
お三輪というその土地の娘と恋仲でした。
ところが、求馬のところへ通う女がいるとお三輪は知って、
現場を押さえようと密会場所へと行ったわけです。
そこにいたのは、やんごとなきお姫さま。
ついにはお三輪と橘姫とで、求馬の取り合いとなりました。
女二人に両腕を取られ、あっちこっちと引っ張られる様は色男というところなのでしょうが、 ただの浮気男じゃん、あんた、大事の役目はどうしたよ、とつい思ってしまいます) いつしか夜は明け、橘姫は慌てて屋敷へと戻りました。
その時、求馬は橘姫に苧環(糸巻きに長い柄がついています)の針を付けます。
苧環に巻かれた赤い糸を頼りに姫の素性を調べようとしたのです。
苧環を手に橘姫の後を追う求馬には、お三輪が苧環の針を付けます。
ところがその白い糸は途中でぷつん、と切れてしまいます。
姿を見失ったら大変と、お三輪は慌てて後を追うのでした。

次は「鱶七上使の段」。
舞台は入鹿の豪華な屋敷へと変わります。
この段の前半は、実は苦手です。眠くなってくるんだよぉ。
幕が開いたすぐは、舞台の冷気が客席に落ちてくるため少し寒いくらいなのですが、
次第に舞台照明の熱と、演じる人たちとお客さんの熱気で、館内温度が上がり、
心地よい眠りへと人々を誘うのです。
この日はかなり寝不足だったため、私もつい寝てしまいました。
他は知りませんが、文楽では寝ている人も結構います。
開演時間がとても長いため、途中うつらうつらしてしまうこともよくあるのです。
でも、今回は面白くなる後半すらほとんどうつらうつら状態だったので、
目が覚めた時はとても悔しい思いをしました。
あぁ、ちゃんと前日は早くに眠らなければ。

ということで、最後の「金殿の段」。
舞台はそのまま、入鹿の屋敷、だから金の御殿の段です。
求馬とはぐれたお三輪でしたが、ようよう行き先を突き止めました。
けれど、官女(侍女)たちから、
今宵、入鹿の娘だった橘姫と求馬の祝言があると聞かされます。
求馬の愛人だと気付いた官女たちはさんざんにお三輪をからかい、いたぶるのでした。
官女たちの言葉に従えば求馬に会わせてやると言われたのに、
ただからかっただけと知ったお三輪は、泣き崩れます。
『男は取られその上に、またこのやうに恥かかされ、何と堪えてゐられうぞ』
頼みの恋人はさっさと心変わりをしたわけですから、
次第にお三輪は、恨み、怒りが止まらなくなるのです。
こんな祝言はぶち壊してやる!とばかりに奥の間へと踏み込んでいこうとしたお三輪に、
立ちはだかる大男が1人。
横をすり抜けようとするお三輪に、なんとその大男は短刀をすらりと抜くと、
ずぶり、とお三輪の脇腹を刺したのでした。
さては、橘姫の差し金(これはもともと文楽用語なんですよ)かと、痛みをこらえ、きっと睨み返すお三輪に、
大男・鱶七は、『それでこそ天晴れ高家の北の方(地位が高い人の正妻)』と言いました。
鱶七は、実は鎌足の家臣・金輪五郎。
白い牝鹿の生き血を飲んだ母から生まれた入鹿の通力(つうりき)を失わせるには、
疑着の相(嫉妬に怒り狂うというところでしょうか)ある女の生き血と、
爪黒の鹿の血を、
ある笛に注ぎ、その笛を吹くしかないこと。
求馬は、鎌足の子で、共に入鹿を伐つために動いていたことを、お三輪に告げます。
だから、血を差し出したお三輪を「高家の北の方」と呼んだのでした。
憎みはしたものの、求馬の役に立つならばと、
位の高い人の正妻と呼ばれた庶民のお三輪は満足し、
それでも最後に恋しい求馬の顔がひと目見たいと言い残して、息絶えるのでした。
そんなお三輪を不憫に思った鱶七は、せめてちゃんと葬ってやろうとお三輪を背中に担ぎ、
異変に気付いた屋敷の雑兵を投げ飛ばしながら、
入鹿の姿を求めて屋敷の奥深くへと入っていくのでした。

相変わらず、長かったですねぇ。
それもその筈、休憩(30分・10分の2回)を入れると、4時間半の観劇になるわけですから。
途中で寝てしまうのも無理ないことです。
観客数が増えたこともあり、現在は、一幕だけの券もあるようです。
これなら長くても1時間半くらい。お近くへお越しの際は、一度如何ですか?

長々と読んでくださり、ありがとうございました。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

文楽・新春公演いくつめの箱かな? ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。